日本のワインづくり140年の系譜

顔が見えるコミュニケーションを通じて、
日本ワインの世界をより豊かなものに育んでいく。

Introduction

ワインとの出会いは、人生に新たな価値の扉を開き、豊かで満ち足りた至福の時をもたらす。
造り手のもとを旅立ったワインが、人々の暮らしに溶け込み、それぞれにとってかけがえのない存在になっていく。
そんな風景を思い描きながら歩んできた、日本のワイン造り。
140年という一つの節目を迎えた日本ワインが、これから先、どこへ向かうのか。
シャトー・メルシャン ブランドマネージャー安部雄一郎に、日本ワインの今後について聞いた。

ワインと出会う時

人が人生においてワインと出会うのは、どのような場面においてであろうか。小さな感動を伴ったワインとの出会いは、そこから始まる人生の時間を豊かなものに変えてくれる。

安部とワインの出会いは大学時代に遡るが、もともとその素地を育んだのは、料理好きの家族の影響が大きいという。
「自然に恵まれた土地に育ち、七草、山菜、タケノコなど、季節ごとに旬のものを手に入れては、母や祖母と料理していました。父も食にこだわりがあり、なぜかシュークリームだけは自分で作る(笑)。昔風の薄い生地のシュークリームを一緒に作ったこともあります。そういう環境に育ったので、料理に興味を持つようになりました。中学生の時、覚えた料理を家族に振る舞う機会があり、父のためにワインを選ぶことになったんです。料理に合いそうなワインを母と一緒に買いに行きましたが、当時はまったく知識がなかったので、いわゆるジャケ買い。何度か繰り返すうちに、どうも父は“シャブリ”と書かれているワインが好きだというのがわかってきました。それがワインに関する最初の思い出です」

その後、料理好きが高じ、趣味にまでなった安部は、大学生の時、イタリアンの店でアルバイトを始め、本格的にワインに触れる。

「店長と一緒にワインの仕入れや展示会に同行するうちに、ワインの奥深さに魅了されました」

入社後、さまざまな部署で経験を積みながら、安部はワイン造りに多くの人間が関わり、個性豊かなワインが世にたくさんあることを知る。
「輸入ワインにも数多く触れましたが、その中には中小のワイナリーが手がけるワインもあり、造り手によって個性が異なるのが印象的でした。その後、シャトー・メルシャンの担当になっても、やはりワインを飲むと、造り手の顔が浮かぶ。ワインに人柄や個性が出るのは洋の東西を問わず、同じでした。特にシャトー・メルシャンの場合、造り手が身近なので、会いにいくこともできる。よりその個性や想いを感じながら、ワインを楽しむことができると思います」

ワインを感じ取る感性は、個人の経験と深く結びついている。自然と関わる中で子供時代を過ごした安部にとって、ワインの香りは草木や土の香りを想起させるという。

「季節を感じながら育ったので、香りで四季を感じます。ワインを飲むと、あの時、あの場所で嗅いだ香りに似ているなと、過去の記憶が呼び覚まされる。逆に、ある香りを嗅いだ瞬間、特定のワインが飲みたくなることもあります」

それは、“テロワール”という言葉とも深いところで通底している。

日本の食には、日本ワイン

“テロワール”とは“土地の風土”を表す言葉だが、安部は単にその土地の土壌や気候を指すだけではないという。「土地に根ざした造り手と、その育った環境、土地に生きる人たちも含めた地域全体がテロワールだと思います」

清酒やビールなどの酒類は原料に加水するが、ワインはブドウ100%。シャトー・メルシャンが掲げる“はじめにブドウありき”というテーマは、それだけブドウが重要だということを表している。
「ブドウを育むのがテロワールであり、シャトー・メルシャンは現在、秋田・福島・長野・山梨でさまざまな種類のブドウを栽培していますが、それは、その地域(=テロワール)に、それぞれのブドウが合っていると考えるからです」

俯瞰して見れば、ワインは世界中で造られている。つまり、日本という国自体がテロワールでもある。
「世界から見れば、日本は独自の風土・文化を持っていて、それが個性です。日本は西洋文化を取り入れることで、固有の文化を置き去りにしてきたところがありますが、ここ数年、日本文化の独自性を見直し、その素晴らしさを再認識する動きが出ています。日本ワインに対する評価も、その一環だと思います」

日本を味わい、再発見するために

日本食ブームやワイン造りのレベルアップを背景に、ワイン市場における日本ワインの存在感が徐々に増している。そうした中で、シャトー・メルシャンが掲げたキーワードが、“Tasting Nippon”である。

「文字通り“日本を味わう”こと。日本ワインはもちろん、日本の食や文化を含め、日本を五感で楽しんでほしい。ワインは食との関わりの中に存在するもので、日本のテロワールが育んだワインなら、日本食と相性がいい。もちろん日本食に限らず、例えば、日本人が作るイタリアンやフレンチなら、どこか“和”のテイストが隠れている。だから、日本ワインが合うのです。家庭料理との相性もいいですし、そうやって食とワインの楽しみ方が広がれば、ワインはもっと暮らしに溶け込み、気軽に楽しめるものになると思います。ワイン文化を日本で開花させ、革新してきたシャトー・メルシャンだからこそ、そのワインを通じて日本の素晴らしさを伝えていきたい。“Tasting Nippon”を軸とした取り組みを通じて、日本ワインを気軽に楽しんでいただき、その美味しさを知っていただくことで、日本の良さを再発見してほしいのです」

日本ワイン、次のステージへ

“Tasting Nippon”のプロジェクト第1弾として開設された「シャトー・メルシャン・クラブ」は、サイトを介した情報発信に加え、シャトー・メルシャンのワインを楽しみながら、日本の魅力を発見することを目的としたファン参加型のコミュニティクラブである。
「これまでは一方的にブランドの魅力を伝えることが多かったのですが、シャトー・メルシャン・クラブを通じて双方向のコミュニケーションが可能になります。お客様と栽培家、造り手をつなぐ場であるところに価値がある。それぞれの思いを理解・共有することで、日本のワイン造りは進化していくことができる。その意味でも、シャトー・メルシャン・クラブの意義は大きいと思います。情報発信、イベント、セミナー、商品情報の提供を通じて、お客様と造り手が触れ合う機会をもっと創出し、ロイヤルファンを増やしていきたいと思います」

そしてもう一つ、シャトー・メルシャンにとって大きな一歩となるのが、ワイナリーの新設。
「勝沼にあるワイナリーに加え、長野県の塩尻市に桔梗ヶ原ワイナリー、上田市に椀子ワイナリーを新設します。それぞれの地域の方と連携するのはもちろん、一般のお客様と触れ合い、造り手の考えや思いを実感していただく場として、新しい可能性を追求したい。一人でも多くの方に足を運んでいただき、ワインに対する思い・理解を深めてほしいと思います」

シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー
※画像はイメージです。

シャトー・メルシャンが目指しているのは、顔が見えるコミュニケーション。栽培家と造り手、ファンをつなぐことで、日本ワインの世界をさらに広く深め、より豊かなものに育てていくことが、ワインの次のステージを拓くことにつながっていく。

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー
※画像はイメージです。

Profile

シャトー・メルシャン ブランドマネージャー 安部雄一郎