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「三位一体」の情熱的なワイン造り

「栽培」「醸造」「研究」に携わる3者が連携し、同じ方向に向かっていく三位一体のワイン造りこそが『シャトー・メルシャン』の強み。栽培部門は畑だけ見ていればいい、製造は収穫されたブドウをつぶせばいい、研究部門はデータをとっておけばいい……それでは、いいワインはできるわけがない。全てを有機的に結びつけて、三位一体でワインを造っていく。そんな体制をリードしていくのがワインメーカーの役割なんです。

栽培を担当するヴィンヤードマネージャーの弦間氏、研究分野のキーマンである現ワインメーカーの小林氏、醸造を管理する私……この3人が現在の『シャトー・メルシャン』の仕組みの枠組みをつくりましたが、それ以前は、お互いの現場を知る機会もあまりなかった。今では、これら3分野の人間が互いの想いをぶつけ合いながら議論するほど、各分野の距離が近くなっています。私たちには、ぶつかり合うだけの情熱と一体感がある。効率を重視した分業だけでは、いいワインは造れない。それは確かなことだと感じています。

研究を重ねてこその「安定」がある

「メルシャンのワイン」と言えば、「大手の工業製品のようなお酒」というイメージを持っている方も多いのでは。しかし、それは、裏を返せば「安定している」ということ。ワインにおける「安定」の実現は、非常に難しいものなんです。ワインの味わいは、どうしてもその年のブドウの出来に左右される。それでも一定以上の味を出せるのは、『シャトー・メルシャン』が、大手メーカーとしてたゆまぬ研究を重ねてきたからこそだと言えます。

意味のないラベルは決して貼らない

とは言え、「安定」だけでは面白くはない。だから、安定の中にも「キラリと光る個性」を表現したいと、日々、新しいチャレンジを続けています。「本当の個性を発揮できた」と確信できないものは、商品として新しいラベルを貼ることは決してない。ただ仕込み分けして、産地の名前を貼りつけても、その個性が表現できていないと意味はないからです。メルシャンの工場長を務め、酒造技術コンサルタントとしても数多くの著書がある故麻井宇介先生に「あなたたちは、近隣のワイナリーさんの10倍のブドウを仕込んでいるのだから、10倍のスピードで進歩しないと嘘ですよ」とよく言われていて、この言葉は、私たちの礎になっています。

もっとお客様の笑顔に近づいていきたい

ワイン造りに携わって感じるよろこびは、やはり、お客様の笑顔。「日本でこんなに美味しいワインがあったんですね!」という言葉にはとても勇気づけられます。これまで、ワインの造り手は、こちらの意図を読み取ってくれるマニアの方をイメージしてワイン造りを進めてきた部分があった。でも今は、もっと幅広い人にワインを楽しんでもらいたいと考えています。

食のシーンをイメージした「マリアージュ」の提案や、味わいのデザインもその試みのひとつ。チーフ・ワインメーカーになってからは、メーカーズディナーや、ワインセミナーで一般のお客様と接する機会も増えてきて、自分たちのワインがどう感じられ、どう飲まれているかを肌で感じるようになりました。

想いと体験を一緒に味わってほしい

「ワイン造りはポエムとサイエンスの融合である」。これは、『甲州きいろ香』の開発にご尽力いただいたボルドー大学デュブルデュー研究室の故富永敬俊博士の言葉。まさしく、サイエンスの裏付けを取りながら、ポエムとしてありたい味わいに最短距離で近づけていくことが私たちの仕事です。ワインとは、その年の気候と土地の風土、そして造り手の想いが詰め込まれたお酒。ブドウ生産者、研究者、ワインメーカー……いろいろな人の想いも詰まっている。そんな背景を感じながら飲んでいただけたらうれしいですね。

私たちのワイナリーは、東京から1時間半程度の場所にあります。ここには、ブドウ畑がある、造り手に会える、ワイン造りの現場をみることができる。さらに、その土地の料理と一緒に楽しめる。それが『シャトー・メルシャン』なんです。フランスやイタリアがワインの本場だと思われる方も多いと思いますが、造られた場所に行ったことがなければ、想いを馳せながら飲むことは難しい。でも、日本ワインならそれができる。これも、大きな魅力だと思っています。

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